007 カジノ・ロワイヤル

監督: マーティン・キャンベル
製作: バーバラ・ブロッコリ
    マイケル・G・ウィルソン

脚本: ニール・パーヴィス
    ロバート・ウェイド
    ポール・ハギス
 
出演: ダニエル・クレイグ ジェームズ・ボンド
    エヴァ・グリーン    ヴェスパー・リンド
    マッツ・ミケルセン ル・シッフル
    ジュディ・デンチ M
    ジェフリー・ライト フェリックス・レイター
    ジャンカルロ・ジャンニーニ マティス


とうとう観てしまった「カジノ・ロワイヤル」。

しかも2度、劇場に足を運んでしまった。

一言で言うならば、とにかく素晴らしい。

自分もここまで、これからの007シリーズについての不安要素を書き立ててきたわけだが、
まったくの杞憂であった。今回のボンドはダニエル・クレイグでなければならなかったし、タイトルバックも良い意味で期待を裏切られた。音楽も文句のつけようがない。

なにはともかく、脚本が良い。台詞も深い。

さすがは「ミリオンダラー・ベイビー」、「クラッシュ」の脚本を書いたポール・ハギスがメインの脚本(ホン)だけあって、人間が良く描かれている。細かい所作にその人間の心情を反映させる部分はアドリブだろうか。そうだとしても、しっかりした演技陣のせいだろう、見事にそれぞれのキャラクターにリアリティを与えている。

ダニエル・クレイグ演じるボンドは、もはやボンドではない。突き詰めて言わせてもらうと、今作はもはや「007シリーズ」ではないと言って良い。

元来、007シリーズというものは"大人の寓話"であり、男の憧れであることは周知の事実であろう。スマートに困難な任務をこなし、美味い物を食い、とんでもなく高いホテルに泊まり、イイ女を抱く。みっとなく汗をかいたり血を流したりすることは基本的にありえない、まるで現代のスーパーマンのような行動…。

そういった常識が、今作ではものの見事に打ち砕かれる。

殴られ血を流し、汗まみれでボンドは全力疾走する。彼はもはやボンドではなく、命を懸けた任務を背負ったMI6の諜報員でしかない。死と背中合わせの、その刹那な佇まいはダニエル・クレイグでなければ演じ切れなかったであろう。イオンプロはキャスティング決定直後のファンからの罵詈雑言を骨太に無視した。その決意の強さに自分は改めて感服する。やはり昨今の007シリーズに最も危機感をもっていたのは、誰あろう当事者のイオンプロだったのだろう。
自分の憶測に過ぎないが、今回のキャスティングは脚本ありきだったのかもしれない。それならばピアース・ブロスナン続投にNGを出した理由も納得できるのだ。

確かに彼(クレイグボンド)は今作の設定において未だボンド=007ではない。
致命的なミスを犯し、社交的にもスマートとはいえない。しかし、不思議とクレイグボンドの成熟形がコネリーボンドだとしても納得がいくのだ。刹那な快楽主義、それがコネリーボンドであったとしてもまったく不自然ではないと自分は思う。そういった意味でも今作は非常に良く作られていると感じた。

いわゆる敵役のマッツ・ミケルソンも、元来の敵役という既成概念を覆すキャラクターを見事に演じていて素晴らしい。喘息の発作止めスプレーを常用し、涙腺の異常から流れる血の涙を時折そっとハンカチで拭う…。天才的な数学能力を備えてはいるものの、彼は単なるひ弱な、組織の駒なのだ。

今作のボンドガールにあたるエヴァ・グリーンも、薄幸な役柄を見事な美貌で包み隠した複雑な役柄を見事に演じている。ボンドとのやりとりは涙さえ誘う部分もあり、"最初で最後の恋"というコピーも、十分納得できる内容となっている。

クレジットデザインも、「ドクター・ノオ」時代のコンセプトに立ち返ったかのような、シンプルでいながらハイセンスなものに変わっており、まるでイオンプロに自分の思いが通じたかのよう。
タイトル曲とのマッチングも良く、その題名となっている「You Know My Name」がラストシーンに反映される部分も脱帽である。おなじみガンバレルロゴも意表をつくかたちでの披露。
いやいや参りましたとしかいいようがない。「ジェームズ・ボンドのテーマ」も、ダニエル・クレイグが実質的にボンドとなる今作終了時のエンドクレジット部分にしか流れない。シビレルぜ、まったく。

愛銃や愛車がああだこうだと勘繰ってはみたものの、"007シリーズ"は今作で完全にリセットされたことで、もはや旧シリーズを踏襲する必要はなくなった。その事実に観賞前は大きな違和感を持っていたのだが、今作を見てしまうと、かえって良いきっかけが出来たのかな、とも思う。ダークな雰囲気。それこそが本来のスパイ映画たるものだとも思う。本当の意味での"大人の"映画、「007シリーズ」はまさしく今作から始まったのだ。

大雑把にかいつまんで感想を述べてきたが、とにかく自分は今作、「カジノ・ロワイヤル」にベタ惚れである。従来、関連グッズ購入などでなんとなく消化できた、幼稚なお気に入り映画
の自己完結ができないのだ。それほど今作の完成度は高く、何度も見直したくなってしまう。
"007映画"であることを差し引いても、ここ何年かのアクション映画というカテゴリーの中では匹敵するものがない作品だと自分は思う。まるで自分のことのように誇らしい気分だ。


ただ心配な点がひとつ…

あまりにも今作が上出来なことから、2年後に公開予定の次回作が相当心配…。

ポール・ハギスが再び脚本を担当するとは大抵思えず(売れっ子なので)、いわゆるこなれたボンドにダニエル・クレイグがどこまで対応できるかも不安。原作通りに進めれば次回作は
「死ぬのは奴らだ」だが、実際はイアン・フレミング原作を焼きなおすのか、他作家の作品を映画化するのかも2年後なのに不透明…。

いやいや、今は取り越し苦労をせず、まずは新生ボンドと新007シリーズに乾杯!
シェイクでもかきまぜでも構わん!
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この記事へのコメント

森マサフミ
2006年12月05日 12:03
ついにアップされましたね。
そしてニュー・ボンドにはまった模様ですね。

次回作以降のネタについては、私が考えています。怒らないでご覧ください。
http://ameblo.jp/lennon19651204/
森マサフミ
2006年12月05日 12:10
早々にコメントありがとうございます。
実はブログの調子が悪くて一旦全削除してしまいました。またのお越しをお待ちしています。
アックス
2006年12月05日 21:11
森さん
コメントありがとうございます。今回ばかりは本当にハマりました。もはやこのブログも007を語るにしようかな…

森さんのところにはしょっちゅうお邪魔しますよー
うのっち
2006年12月07日 20:37
どうもこんにちは。
ブログへのコメントありがとうございました!お礼も兼ねて、遊びに参りましたw

私も試写会や先行上映などを含めて3回も観ましたが、ホント素晴らしかったです。久々に本格スパイ・アクションとして007がよみがえってきた感じがしました。コネリー時代が好きな007ファンにはストライクでしょうし、ブロスナン時代のファンには新鮮でしょう。ただ気になるのはやはり次回作BOND22でしょうか…。
アックス
2006年12月07日 21:43
うのっちさん、来ていただいてありがとうございます。

まったく同感ですね。次回作がかえって心配です。とりあえずもう一回、4K上映に行きます。この映画でダニエル・クレイグも一回り大きくなったなったような気がしますね。これからもよろしくお願いします。
bond
2007年11月01日 16:17
一般のアクション映画としてなら評価できるがボンド映画としては失敗だろう。全編を通してボンドに違和感を感じっぱなしだった。スーツもタキシードも似合わない(あの唇はいかりや長介かい!)、どう見てもイギリスの田舎の農場労働者にしか見えないのである。原作のボンドの持つダンディでスマートでかつ、いざとなったらツワモノになるイメージには程遠い。なんでこの役者を選択したのか理解できない。またQもマネーペニーも出ない、一作目から映画館で観てきたが、こんなにガッカリした物はない。ダニエルクレイグの今回限りでの降板を切望する。余談ですがルシッフルは鳥肌実に見えない?
アックス
2007年11月30日 21:47
bondさん、コメントありがとうございます。

007シリーズの様式美に縛られずに観たほうが、この映画は良いと思いますよ。実際の諜報員らしさはクレイグが一番だと自分は思います。

ここから新シリーズが始まるなら、自分は大歓迎です。

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