トゥモロー・ワールド

初公開年月  2006年11月18日
監督: アルフォンソ・キュアロン

原作: P・D・ジェイムズ
脚本: アルフォンソ・キュアロン
    ティモシー・J・セクストン

撮影: エマニュエル・ルベツキ

出演: クライヴ・オーウェン セオ・ファロン
ジュリアン・ムーア ジュリアン・テイラー
マイケル・ケイン 他

久しぶりに“SF映画”を観たわけだが、昨今のいわゆる“娯楽SF”とは一線を画す作品という印象が強い。

この映画からは70年代のSF映画の香りがする。未来に対して必ずしも持つことが出来ない“希望”。むしろ絶望感が支配するダークなトーンは、例えば「猿の惑星」や「ソイレント・グリーン」等の映画を連想させられる。

子供が生まれなくなった近未来。民衆の蜂起によって秩序を失った世界。貧富の格差の拡大はより一層色濃くなり、唯一治安を維持することができた英国は、不法入国者の徹底締め出しという方法で社会を維持していた。

この“英国”という部分が興味深い。ロスチャ○○○のお膝元という意味で、あまりにもありえる未来な気がする。

ひそかに地球全体の人口削減を図られている事実がある現在、出産の人為的抑制という手段は、あまりにも現実的ではないか。この映画では人為的という表現はないものの、自然発生的な事象という表現もされてはいない。

内容を差し置いても、特に激しい戦闘シーンのワンショット長回しには圧倒される。稚拙な表現だが、まるでその現場に自分がいるような圧倒的なリアリティー感。大変な撮影技術の賜物であろう。あえてカメラレンズに飛んだ血糊を拭わずに進行する市街戦のシーンは、ちょっとした驚愕ものである。実際、今作はヴェネツィア国際映画祭で、オゼッラ賞(技術貢献賞)をエマニュエル・ルベツキ (撮影)が受賞している。

設定は2027年だが、作品中に流れるブリティッシュロックは往年の名曲ばかりであるところがまた良い。古きよき時代に対するオマージュであると同時に、今更帰れない過去への思いが全体から漂ってくるのだ(宙に浮く巨大ブタとか涙モノだったりする)。

マイケル・ケインが良い脇役を演じている。愛する友の自己犠牲による死を演じた彼の存在が、この作品により厚みを増しているのは間違いない。

この映画は、数年先に起こりえる、超近未来からのリアルな現代への警告である。原作は未読だが、やはり映像という手段によって昇華した作品であると思う。しかし邦題がひどすぎる、このタイトルが原因で観賞を敬遠した人間も多いのでは?(原題は“CHILDREN OF MEN”)。ラストがあまりにもお気楽という感想も見受けられるが、“一縷の望み”を感じさせる部分であり、抽象的な“楽園”を思わせる存在の非現実感が、唯一人間の良心によって生じた未来を表していると自分は思った。

食わず嫌いを克服して観賞に時間を割いても決して後悔しない作品。決して単なる空想映画ではない、近年稀に見る重厚な作品となっている。必見。






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