ホテル・ルワンダ

 久々に心に残る映画を観てしまったので、今回は予定変更。

初公開年月 2006/01/14
監督: テリー・ジョージ
脚本: テリー・ジョージ
     ケア・ピアソン

出演: ドン・チードル
    ソフィー・オコネドー
    ホアキン・フェニックス
    ニック・ノルティ  他


「ホテル・ルワンダ」を観た。観賞のきっかけは、恥ずかしながらテレビ朝日、金曜深夜に不定期で放送されている「虎の門」内、井筒監督の「こちとら自腹じゃ」でこの映画を取り上げた回を見たからである。

 何も井筒監督を信奉しているわけではないが、彼の歯に衣を着せない評論には好感を持っていた。この映画の題材である"ルワンダの内戦"についてまったく無知だったことも手伝って、かねてから観たいと思っていたのである。

 すでにご存知だとは思うが、今作は当初、日本公開の予定はなかった。特に客が呼べる俳優が出ているわけでもなく(実は端役でホアキン・フェニックス、ジャン・レノなども出演してはいるが)、派手なアクションシーンもない、実話を題材にした社会派映画は商売にならないと配給会社は踏んだのであろう。それ以外の政治的理由も考えられるが。

 一部の有志がインターネットを通じて署名を集め、やっと数館のみで公開されることになったわけだが、意外と集客率は高かったと聞いている。配給会社も、日本の観客をなめるのもいいかげんにしてもらいたいものである。


 今からたかだか12年ほど前に、何万人もの大虐殺がアフリカであったことを認識している日本人は、果たしてどれほどいるのだろう。マスコミからの情報以外に海外の情勢を知るすべの無い我々は、まるで親鳥から与えられる餌を待つヒナ鳥同然だ。日本人が関係しない、または直接関与のない国については報道があまりされないのが実情とはいえ、これほどの大虐殺が大きくとりあげられなかった事実に背筋が寒くなる。

 作品については、まずドン・チードルがいい。
細面で誠実さが売りの、よくあるホテルマン様であるところは、実在のポール・ルセサバギナ とは異なるところだが、凡人ともいえるチードルの演技がこの映画のテーマといえる
"誰にでもある(はずの)勇気と正義感"をよりいっそう浮き彫りにしているといえる。当初はデンゼル・ワシントンやウエズリー・スナイプスの配役を配給会社は目論んだらしいが、それを断固として拒否した監督に心底敬服せざるを得ない。当初は家族を守るためだけの主人公が、自らの行いを恥じては生きてゆけないという尊厳から、1200人ものツチ族を救う行為に奔走する。自分の身に置き換えて、それが自分にできるだろうか?その決断を観賞側に強烈に問いかけてくる内容の映画である。そしてそれはチードルの演技によるものが大きいと思う。

 個人的に、報道記者を演じたホアキン・フェニックスが大変印象に残っている。
彼の台詞にある「この事実(フツ族によるツチ大虐殺)を報道しても何も変わらない。視聴者は夕食を摂りながら他人事だと思うだけだ」という下りは、心に突き刺さるものがある。
 そして彼(ホアキン)からは、演技を超えた"伝える熱意"をとても感じるのだ。自分の気のせいではないと思う。

 無論、監督のテリー・ジョージも同様の熱意を持ち、この作品を完成させたことは、DVDの
「ホテル・ルワンダ プレミアム・エディション」に収録されているメイキング等を観れば明らかである。この監督の素晴らしい部分は、このような深刻な社会派ドラマをしっかりと娯楽作品に仕上げていることだ。

「より多くの人に観てもらって、この事実を繰り返さないよう考えてもらいたい」

 この監督の意図は、見事にこの作品に反映されたと自分は思っている。オスカーにも数部門に渡ってノミネートされ、海外では非常に評価も高かった。しかし、日本では特に政治的な理由があったわけでもないのに上映されなかったかもしれないのだ。恥ずかしいぞ日本の映画関係者!

 「国連」を、世界における正義の拠り所だと勘違いしている輩はいないよね?、もしいまだにそう思っているならとにかくこの映画を見ろ!この題材(ルワンダ内戦)を、より深く掘り下げていくと、きっと見えてくるものがあるはずで、今の"世界"をもっと考えることができるのではないだろうか。

日本の配給会社も、意味の無いお子様向け映画ばっかり配給して小銭稼ごうとせず、こういう映画を全国上映しろ!心配するな、きっと客は入る!

 

 






 


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この記事へのコメント

mango-fruit
2006年10月28日 01:33
アックスさん、はじめまして。
コメントありがとうございました。アックスさんも映画好きなのですね。「ホテルルワンダ」は今年一番心に残る映画です。ドン・チードルの演技には胸がつまりました。
また、ちょくちょく訪問させてもらいます。
アックス
2006年10月30日 00:15
mango-fruitさん

コメントありがとうございます。こういう映画がもっと日本で観られるようになるといいですよね。アメリカ、最近いろいろありますが、あそこの偉いところは、自らの恥部を隠すことなく映画という表現手段で自己反省できるところだと自分は思います。mango-fruitさんの映画感想、また楽しみにしております。
ルワンダ
2006年12月19日 14:15
映画の中でジャーナリストが救援を待つ支配人に言う言葉が印象的でした。「虐殺の映像を見ても、人々は『ひどいね…』と感想をもらし、食事をつづけるだけですよ」
どれだけショックを受け、どれだけ考えさせられたとしても、映像から伝わってくる情報は、あくまでもただの知識としての情報としかならない。何も言えない。感想を言葉にしても、それが偽善で奇麗事でしかないことを、平和の中で甘んじている私たちはもう気づいている。気づいてはいるが、その知識を肌身で実感し認識するすべが分からない。どうすれば100万人の死という惨状を認識できるのか。どうすればテレビゲームのように飛び交う砲弾の先にいる人の恐怖や苦しみが認識できるのか。分からない。真実を伝えようとする人間の虚しさも、現代社会が抱える闇を映し出しているんですね。・・・
http://blog.livedoor.jp/tarotohachinosu/
アックス
2006年12月27日 22:33
ルワンダさん、ありがとうございます。コメント頂いたのに長いこと気づかずに申し訳ない。
このルワンダの出来事に限らず、豊富な資源を持つところには死肉にハゲタカが群がるがごとく、先進国による介入がなされているんですね。それだけではなく、その気に乗じて私腹を肥やす同種族の輩も派生しています。もちろん、このルワンダの内戦も完全に終結したわけではなく、近隣のウガンダなどに逃げたフツのゲリラたちは応戦の機をうかがっていたりするわけで、そういった事実をなぜ多くの人間が知らないのでしょう。マスコミが我々に伝える事柄は、一部の人間にとって都合の悪いものは含まれないものなのです。
最近では「麦の穂を揺らす風」、「父親たちの星条旗」などのように、歴史的汚点というべき事柄を積極的に取り上げる内容の作品もありますが、翻って、なぜ日本にはこのような作品が少ないのでしょうね。思想の自由が商業ベースに負けてしまっているのか、それとももはや思考能力・過去を鑑みる反省能力というのかが欠落してしまっているのでしょうか。ひとりひとりが考えることをやめないことが、今、一番大事なことだと自分は思います。

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